法務局における自筆証書遺言書保管制度について

令和2年度7月10日から、法務局で自筆証書遺言書を保管してくれる制度が始まります!

40年ぶりの相続法改正です。従来の規定が変更されたり、新しい制度が創設されたりしました。その中でも、「自筆証書遺言の保管制度」は注目を集めている新しい制度です。実際に制度がスタートするのは令和2年7月10日、法務局での事前の予約は令和2年7月1日からすでに受付が開始しています。

自筆証書遺言書の保管制度では、法務局が遺言書を保管することになるため安全性はとても高いです。そこで今回は、同じく安全性が高いとされる公正証書遺言書と比較して、結局どちらによるべきか?を簡単に一覧にまとめました。

自筆証書遺言の保管制度の特徴

〇 1.費用: 3,900円
〇 2.手間: 自分で書いて預けるだけ
△ 3.本人が出向けない場合: 出張サービスなし
〇 4.場所: 住所地・本籍地等の特定の法務局
〇 5.安全性: 法務局で保管
〇 6.保管期間: 死後50年(コンピューターデータは150年)
〇 7.検索システム:あり
〇 8.検認: 不要
△ 9.紛争の防止: 必ずしも役立つとは言えない(※1参照)
〇 10.相続開始の通知: あり

公正証書遺言書の特徴

〇 1.費用: 数万円(遺産の金額による)
△ 2.手間: 必要書類の収集や公証人との打ち合わせが必要
△ 3.本人が出向けない場合: 出張サービスあり
〇 4.場所: 公証役場ならどこでも
〇 5.安全性: 公証役場で保管
〇 6.保管期間: 半永久的(実務上の取扱い)
〇 7.検索システム:あり
〇 8.検認: 不要
〇 9.紛争の防止: 概ね役立つと言える(※1参照)
△ 10.相続開始の通知: なし

結局、保管制度を利用すべきなのか公正証書遺言書を作るべきなのか?

さて、自筆証書遺言の保管制度が始まれば、この制度の利用も十分検討に値しますが、上記で検討したように「紛争の防止」という観点からは、公正証書遺言の作成を推奨します。

保管制度は、遺言者自身による自筆証書遺言の存在を確保できるだけにすぎません。ですから、自筆証書遺言の内容の有効性が争われた場合にはこれを回避することは困難です。なぜなら、証人もいませんし、内容についての意思確認もされないからです。

遺言を作る目的の1つとしては、相続発生後の紛争を予防することにあると思います。確かに保管制度は、費用もほとんどかからず、手間もかかりませんから、時間も費用も節約したい方にとっては利用しやすい制度かもしれません。

しかし、「紛争の防止」に役立たない遺言書を残しても、残された相続人が迷惑なだけではないでしょうか。実際、紛争の防止に役立たない遺言書を残された相続人からのご相談数はよくある話しです。

これから遺言書の作成を検討する方は、遺言を作る目的を見失わず、広い視野に立って考えていただきたいと思います。それを踏まえたうえで、特に費用面の問題からどうしても保管制度を利用したいという場合は、次のやりかたをお勧めします。

1、自筆の遺言書内容について、専門家のアドバイスを受ける
2、その上で自筆証書遺言の保管制度を利用する
当事務所でも、業務上、故人が遺した自筆の遺言書を拝見する機会があります。その内、形式的にも内容的にも一切問題が無く、かつ紛争の防止にも役立っていると考えられる自筆遺言書は、残念ながらごくわずかです。

例えば、問題がある自筆の遺言書としては次のようなものがあります。

【問題のある遺言書の代表例】
1、そもそも法律が定める遺言の形式的な有効要件を充たしていないもの
2、有効要件は充足しているものの内容が不明瞭(または支離滅裂)で、相続手続きでは使えないようなもの
3、確かに要件は整っているが、特定の相続人の遺留分を侵害している等、遺言があることにより別の問題を発生させているもの
4、これら以外でも相続人や私たち専門家を悩ませるようなもの(判例や先例もなく解釈が難しいもの)
ですから、自筆証書遺言の保管制度を利用するのであれば、作成した遺言書を法務局に預ける前に、専門家にチェックしてもらうのが良いでしょう。

これにより法的にも問題のない遺言書を作ることができ、かつ、それを法務局に保管することにより、公正証書遺言と同等とは言えませんが、より近い形で希望を実現できます。

結論、遺言を作る目的別の作成方法

1、自筆証書遺言を自宅等適切な方法で保管するのがおすすめな方

とにかく遺言書が作れれば良い。
遺言書の作成に費用は全くかけたくない。
相続でもめる可能性もなく、念の為作りたいだけである。

2、自筆証書遺言の保管制度がおすすめな方(法務局へご相談ください)

とにかく遺言書が作れれば良い。
できるだけ費用はかけたくない。
相続で揉める可能性もなく、念の為作りたいだけである。
安全な公的機関に保管したい。
可能な限り費用はかけたくない。

3、自筆証書遺言の保管制度「サポート」がおすすめな方(当事務所にご相談ください)

できれば法的に問題の無い内容の遺言書が作りたい。
相続で揉める可能性があるので内容については専門家のアドバイスが欲しい。
安全な公的機関に保管したい。
公正証書ほど費用はかけたくない。

4、公正証書遺言がおすすめな方(お近くの公証役場にご相談ください)

遺言の内容は決まっているので、公証人とのやり取りは自分でできる。
時間や手間、多少の費用が掛かっても安心・安全な遺言書を作りたい。
死後に「遺言無効確認の訴え」などを相続人に起されたくないので「本人の意思確認」もしてくれる公証役場を利用したい。

5、公正証書遺言の作成「サポート」がおすすめな方(当事務所にご相談ください)

遺言の内容についてどのようにすればよいか分からないので税務上・法律上の個別具体的なアドバイスが欲しい。
死後に「遺言無効確認の訴え」などを相続人に起されたくないので「本人の意思確認」もしてくれる公証役場を利用したい。
時間や手間はかけたくない(公証人とのやりとりは自分では難しいと思う)。
費用は掛かっても最大限に安心・安全な遺言を作りたい。

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